看護関連

師匠の旅たち Ⅰ

お盆の時期は、お伺いしていた利用者様の旅たちを迎えることがあります

ターミナルケアをしている利用者様にどなたかがお迎えに来て、旅立つのです

この世からの「卒業」なのでしょうか

10年来、お伺いしておりました私が「師匠」と心に決めていた利用者様が旅たちを迎えられました

在宅での看取り、ではありませんでしたので、まだ、旅立った実感がないのです

今でも病院にいる気がしています

出逢いは、かれこれ、10年以上前

脊髄損傷で、リハビリ施設での訓練が終わり、自宅に戻った方でした

住宅改修もすませ、車いす生活の環境を整え、装具を使用しての食事をする、状態で自宅に戻りました

俺、胸から下は動かねえから  口は達者だからよろしくな!

自分の負った障害を払拭するような覇気を感じさせてくれました

全身状態の観察、排便コントロール、リハビリテーション、時間があれば車椅子移乗

看護の内容は、広く、深い展開となりました

「口は達者だからよろしくな」という通り、社交的で活動的だったTさん
訪問中は、弾丸のように話しまくります

話しまくるのですが決して、一方的ではないのです
「あなたの意見はどうなのか?」という姿勢

その時世の話題を知らないと、こちらも意見を伝えれないので、ニュースを見たり、新聞を見たり、本当に勉強になりました

新卒ナースたちから、Tさんに何を話したらよいかわからない、と言われたことがありました

学校で、「患者への傾聴」は教えられても、患者へ考えた意見を伝える、とは学んでこないからです。

そうね、まずは、今世の中で、なにが起きているのかの情報を集めてみようか
そして、それに対して、自分はどう考えるのか、を考えてみよう

昼休みに携帯でゲームをしている新卒ナースたちでしたが情報収集をするようになりました

Tさんの支援は、新卒ナースにとって、看護技術は上達しないといけない、時世の話題の意見を求められる、それはそれは、簡単なことではなかったはずです
あっという間、怒涛の如くの90分支援

支援が終わるとTさんは、必ず言うのです

嫌だと思わねえで、また、来てね、と

緊張して対応していた新卒ナースたちの顔は苦笑い

新卒ナースたちは、自分の心を見透かされた、ことに気づいたのでしょう

Tさんの人を見る目は、本物です


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