看護関連

死生観が変わるとき

看取りは、とっても神聖な瞬間で、その瞬間は、旅たちを迎える方にとっては平等に訪れる

訪問看護師がその神聖な瞬間に立ち会うことができるのは、選ばれた看護師だけだ、と私は思う

半年前、新卒2年目ナースと看取りケアを行った

新卒2年目ナースは、旅たちを迎える方々に選ばれる

新卒1年目のぎこちない会話、その時間をどう一緒に過ごすことがお互いよいのか、毎回試行錯誤、振り返りをして考えていたのだろうと思う

今日はいっぱいいっぱいだったな・・・

もう少し聞いてあげれたらよかったな・・・何をどうゆう風に聞いたら良いのだろうか?

私の話を利用者様やご家族はどう感じているのだろうか・・・これでよいのだろうか???

同行したときに私はアドバイスをする  なぜそれを聞いたのかな?その内容をどう解釈する?

聞き方は凄くよかったよ、もう少し落ち着いて問診するとよいね 等々

限られた時間で、その方のニーズ、しかも看取りに向かう方のニーズをくみ取る技術

一度や二度でその技術が上がるなどとは、2年目ナースも思ってはいない

これでいい、と自分で決めてしまった時に成長は終了する

一生懸命に試行錯誤して向き合う2年目ナースは緊張しながらも輝いている

独居の方が病院は嫌だといい自分の家で旅たつことを決めた

なぜ病院が嫌なのか、を聞いてみた

ストマ造設の時に入院した、その時相部屋で、向かいの人が「看護婦さーん」と呼んでナースコールを鳴らしているのに

看護師は見に来ても素知らぬふりで部屋を出いていった

困っているのに、何かしてあげたらよいのに、と思った また入院したらあんな目に自分も会うと思う、と言う

家に居れて、良かったね、とほほ笑む  Kさんは幸せなのよ、と

お花が好きで、ベランダでたくさんの植物を世話していた

下肢も浮腫み歩行が難しくなりベットにいることが多くなった

ベランダに植えた朝顔の花が咲き乱れている ピンク、薄ピンク、紫、薄紫、本当にきれいな光景

ちょうどよく、ベットからもその花たちを見ることが出来た 

目を開けるたびにその花たちに囲まれている気分もあったのだろう

ねえねえ、Kさんのお花の水はどうしているの?と新卒2年目に聞いた

私がやっていますよ~Kさんできないですから  なるほど

で、次の訪問は私が行くのだけどどうすればよい? 

朝顔への水やりの仕方を丁寧に教えてくれた新卒2年目ナース  これは、かなりKさんからの信頼は厚い

独身で、姉妹の世話もしながら一人で生きてきたKさん、いろいろお手伝いしようと提案してきたが

「大丈夫、できるから」と断られてきた

一番大切にしてきたお花の水やりを新卒2年目に託したのだ

二人の関係性に水を差さないように、じっと見守る

ある時、新卒2年目ナースが  Kさんの事は一番自分がわかるように努力しています、という

同行すると、二人のあ・うんの呼吸でケアがなされていることに気づく  

私は補佐役に徹する

K さんと新卒2年年目ナースは、ひと時、ひと時を大切に過ごしていたのだと感じた

旅たちの日 Kさんは日が昇った朝を選んだ  

20年も訪問看護師をやり看取りを何件もしてきた私であるが呼吸が止まる瞬間に立ち会えたことは初めてであった

「外の空気を感じていたいのよ」と夜・昼構わず寝ている頭側の窓を何センチか開けて寝ていたKさん

澄んだ朝の空気を感じて、旅たちを迎えた

新卒2年目のナースに電話しないと!と声を震わせて、電話をした

「今から行きます!」急いで駆け付けた新卒2年目ナース  その目からは涙があふれていた

Kさん良かったね、Kさんの思い通りになったよ  一生懸命に声をかけている姿

死亡診断が終わっても、まだ聴覚は聞こえているという  新卒2年目の声が届いているのだろう

エンゼルケアが終わった後、お顔は微笑んでいた 

まるで眠っているようにお顔を整えることができて、私は感無量の思い

とってもきれいよ、Kさん もともと美人顔 そういえば、髪が伸びすぎたから切って頂戴、と

言ってくれたこともあったね  さっぱりした髪をみて、あーいいわ、と言っていた

 

最後の朝顔が咲き切ったときに旅立つのかな、と思っていました 

あの最後の朝顔は、Kさんだったのですね、という新卒2年目ナース

Kさんから朝顔の種を頂いていた、という  その花が咲いたとき、朝顔を見るたびに、

私たちはKさんを思い出すのだろう   にこやかに「じゃあね」と手を振っているKさんの姿を

出会いに感謝、ありがとう、ありがとう  また会ったら必ず声をかけてね 忘れない

頂いた朝顔の種は、大事に育てます    花が咲いたとき、この世に戻ってきてね

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