私の年齢的なこともあり、同級生のご家族への訪問をすることが増えてきました
十年単位で会っていなかった、同級生
でも、面影は皆さん残っていて、もしかして○○ちゃんかな?
頭の中で、保育園が一緒?いや、小学校だったかな、と一生懸命に名簿を探します
退院時カンファランスで同席をしたときに、あれ?同級生かな、と
カンファランスの申し送りも半分聞きながら、頭の中は、同級生の名前を思い出す作業
あ!分かった、小学1年の時に一緒だった、○○ちゃん!!
カンファランスが終了し、訪問看護です、よろしくお願いいたします、とあいさつし、
間違っていたら、ごめんなさい、もしかして○○さん?
え?と驚いた様子で、真剣に私の顔を見つめる
小学生の時とは風貌もかなり変わり、お互いに年齢を重ねている
小学校1年の時に一緒だったサオリです
サオリちゃんなの?私も変わってしまったから、とお互い年を重ねたことに
ふふ・・と笑いが込み上げる
良かった~、よろしくお願いしますね、と緊張していた彼女の顔が少し緩んだ気がした
彼女は関東で仕事をしていて、コロナの影響で在宅ワーク、お母さんの介護もしてあげたいと思い、故郷、宮古に戻っていたのだ
退院してから、彼女のお母さんに、同級生だったんですよ、本当に懐かしい
また、ご縁があってうれしく思います、とはなすと彼女のお母さんは微笑んでいた
医療保険での週二回の訪問予定としました
病院からの申し送りでは、認知機能の低下が指摘され、指示を理解できず、ベットから降りて歩行してしまうので、転倒が危険、とのことでした
夜間もナースコールが多かった、とのこと
娘さん曰く、おかあちゃんは家に帰りたい、帰りたい、と言っていたんだよね、と
ならば、在宅療養の選択は、ご本人の意思なんだね
一生懸命、最後までお手伝いさせていただきます!
これでよかったのかな、と不安な顔を見せる同級生の彼女に、大丈夫、訪問診療の先生も来てくれる、私たちも夜でも、昼でも訪問するから心配ないよ!
心配になったら連絡してね、と彼女の肩をなでる
在宅に戻ってからの同級生のお母ちゃん、Tさんは思いのほか足取りがしっかりしていた
お父さんが療養していた時に設置した廊下の手すりにしっかりつかまり、トイレに歩行していた
最初は、清潔ケアは清拭と部分浴、としていたが歩行ができるので、自宅のシャワー浴に踏み切った
あー、いいねえ 微笑みながら、 シャンプーは二回するこだわりもあった
二階の居室から、私と娘さんが写る、小学校入学式の写真をとってきて、見せてくれた
この時の先生は、○○先生だったよね ○○ちゃんは同級生なの?などなど、質問攻めにあう (笑)
懐かしい話で盛り上がった
この歩行がそう長くは続かないかもしれない、と思いながら支援をした
頻回のトイレ介助に疲労気味の娘さん、主治医からもポータブルトイレをすすめられたがTさんは、使おうとはしなかった
最後まで、トイレで用をたす、という信念だった
食事も病院では、摂取量が少ないので、と申し送りを受けたが自宅では、出前を取って!と希望を伝えていた
訪問すると、今日も出前だったんだよね、と娘さん
私が料理得意じゃないから口に合わないのかも・・・
違うのよ、味の濃いものを好んでいるのだと思うよ
味覚が味の濃いものに反応しているのよ
いいじゃない、病院では出前取れなかったんだから、お母さんはそれが食べたいのよね、ね、お母さん
はい、はい、と答える Tさん
果物もスイカが好きだ、と毎日スイカを食べ続け、飽きたのでメロンに変えた
高級志向になってしまって、と苦笑いの娘さん
親子の会話を微笑ましい空気が包んでいた
色で表すと薄ピンクと薄オレンジを混ぜたような空気
夕方に娘さんから連絡
ベットからおりたが床に倒れこみ起きれない状態、だという
わかった!今から行きます!!寒くないようにして待っていてね
浮腫みも強くなり重い体を動かせないでいた
声掛けには、はい、しか言わず、意識も1点を見つめている
明らかに、レベル低下している
浮腫みで重さがあることからタオルケットを担架にして、私と娘さんとでベットにやっと上げた
ずっしりとした浮腫みのある体が刻々と時間を刻んでいるように思えた
同級生の娘さんに、この先はトイレに行くのは無理だと思うからリハビリパンツではなく、おむつの方が良いとおもう、と助言した
うん、そうだね、と
少し、話、いいかな 多分、時間が近づいている、お姉さんとかには話をしている?
姉さんは、仕事があるからすぐには来れない、んだよね
でも、私ももうダメかな、と思っている
そう、状態が変化しているから主治医には相談した方がいいと思う
きっと、往診してくれると思うから
娘さんが主治医に連絡したところ、主治医はすぐに様子を見に来てくれたという
その日の夜、Tさんは、起きたい、と体を持ち上げ、うわごとのように話をし続けた
起きたいのだね、娘さんが正面から抱きかかえ、私は背中を支えた
娘さんに抱きかかえられたTさん、言葉にならない言葉で、ありがとう、と
泣き崩れる娘さん
私だって、ありがとうだよ!お母ちゃん!!
ウトウトしながらも時々目を開ける
お母ちゃん、何か飲む?水?お茶?ビール?
そうだね、Tさんはビールが好きで、退院して来た時、ビールを少し飲んだ、と言っていた
嬉しそうだった
娘さんがビール?お母ちゃんビールがいいの?と聞くと「はい」と答えたTさん
口腔ケア用スポンジにビールを含ませて、口に持っていくと吸い始めた
しかも、むせなどしない
やっぱり、ビールが飲みたかったんだね、とその場にいた私たちを和ませてくれたTさん
時間が刻々と刻む 今日か明日か、という状態
最後の時間を家族で過ごしてもらいたくて、一度、退室した
それから間もなく、呼吸がおかしい、と連絡を頂いた
Tさんは、ありがとうと娘さんや親せきの方に伝えて、穏やかに旅立った
なかなか、旅たつときに、「ありがとう」と伝える方は多くない
娘さんは、医療装具をすすめたことを後悔していた
けれど、その選択がなければ、こうして在宅でビールをのむことはできなかった
出前を取って、好きなものを食べることもできなかった
娘さんが医療装具をつけることを選択したおかげで、Tさんは在宅で過ごすことができたのです
私は、同級生の彼女を誇りに思う
決断の連続だったに違いない
勇気を振り絞り、ここまで決断をして、お母さんからのメッセージ
「ありがとう」を受け取ることができた
涙の中で、娘さんが言った
お母ちゃんね、お墓に入りたくない、っていっていたのよ
宇宙葬にしてくれって
どこで、宇宙葬を知ったのか、ね どうしようかな、と微笑む娘さん
Tさんのことだから、ちゃんと自分で空をめがけて昇っていくよ
そう、思えてならないのです
昇った魂は、キラキラと輝いて、○○ちゃんを見守るんだよ
ご縁があったことに感謝します
本当にありがとう